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第215回静岡病理医会Case07--レニン産生腫瘍 †
30歳代女性腎腫瘍 聖隷浜松病院 清水進一
臨床経過 †
以前から高血圧を指摘されており,時々頭痛もあった。
X年,高血圧(200/120)を指摘され,血中レニンが高値であったが,画像上,腎に明らかな病変は認められなかった。
8年後,他院でCTを施行したところ、左腎の腎盂,腎門部寄りに1.7cm大の腫瘤が認められた。造影ではhypervascular tumorであった。
検査成績:レニン活性:10.4ng/ml(正常0.5-2ng/ml),術後0.4ng/mlに低下。
アルドステロン:120pg/ml(正常30-160pg/ml)。カリウム:3.7mEq/l(3.4-4.5mE/l)
肉眼所見:後腹膜鏡下左腎部分切除術施行。線維性被膜を有す境界明瞭な腫瘤である。
組織像 †
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線維性皮膜を有する境界明瞭な腫瘤 | | |
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HE対物10X | HE対物20X | HE対物40X |
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レニン免疫染色 | 電顕写真 | |
病理診断と解説 †
レニン産生腫瘍(旁糸球体細胞腫,レニン腫)
1967年,Robertsonらにより報告されて以来, 70例ほど報告例がある。
- 年令は6〜69歳(10〜20歳代,平均27歳). 性差はなし(やや女性に多い)。
- 腫瘍が確認される何年も前から高血圧を呈す(腫瘍切除で正常となる)。
- レニン,アルドステロンの上昇。低K血症。
- 腫瘍は片側性,単発性。多くは径3cm以下の境界明瞭な充実性腫瘍。
- 腫瘍細胞は円形〜多角形,好酸性胞体を有し,核は類円型。胞巣状,索状の配列(紡錘形細胞,腺腔形成もあり)。
- 診断には臨床情報が重要(高血圧症の存在,通常のH E標本のみでは診断は難しい)。
- 電顕的に菱形の結晶(rhomboid crystal of proto-renin)の存在。
- 免疫組織化学的に抗レニン抗体陽性。
vimetin,SMA(focal),CD34,CD117に陽性(GISTと同じ!?),keratin,HMB45には陰性。
- 再発,転移はごく稀(腎静脈に浸潤する15cm大の腫瘍。6年後に両肺転移)。
閲覧者のコメント †
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