ホメオボックス(homeobox)

ホメオボックス(homeobox)とは動物、植物及び菌類の発生の調節に関連する相同性の高いDNA塩基配列である。ホメオボックスを持つ遺伝子はホメオボックス遺伝子と呼ばれ、ホメオボックス遺伝子ファミリーを構成する。

  • ホメオボックスはおおよそ180塩基対があり、DNAに結合しうるタンパク質部位(ホメオドメインという)をコードする。
     
  • ホメオドメインはDNAへ特異的に結合する。しかしながら、単独のホメオドメインタンパク質の特異性は通常、その要求される標的遺伝子だけを認識するに充分ではない。
     
  • ほとんどの場合、ホメオドメインタンパクは他の転写因子または高頻度にホメオドメインタンパク質との複合体としてその標的遺伝子のプロモーター領域で働いている。その様な複合体は単独のホメオドメインタンパク質よりも高度な標的特異性を持つ。
     
    ホメオボックス遺伝子は、例えば脚を作るのに必要なすべての遺伝子など、典型的に他の遺伝子のカスケードをスイッチする転写因子をコードする。

ホメオーシス(homeosis、相同異質形成)という現象

相同の付属構造が場所を変えて生じる現象つまり体のある部分が,他の部分と置き換わってしまうような現象をホメオーシスと名づけられた(Bateson, 1894)。
たとえば、ザリガニの眼柄を除去すると普通は眼柄が再生するが、まれに触角が再生することがある。また、ショウジョウバエの突然変異で、触角の位置に肢が生えることがある。眼柄、触角、肢はいずれもそれぞれ本来生ずる体節に固有の付属構造である。
ホメオーシスを起こすような突然変異をホメオティック突然変異(homeotic mutation、相同異質形成突然変異)と呼ぶ。

体節構造が決まると、それぞれの体節に固有な組織構造を作る遺伝子が働くことになる,これを制御している遺伝子がホメオティック選択遺伝子(homeotic selector gene)である。特定の体節で発現した調節タンパク質が、その体節固有の構造を支配する遺伝子を活性化することになる。

  • ショウジョウバエでは、ホメオティック選択遺伝子は第3染色体上に2つのクラスタをつくる。一つはアンテナペディア遺伝子群(Antenapedia complex)で、もう一つは双胸遺伝子群(bithorax complex)である。群とあるように、それぞれ複数の遺伝子が近い位置に並んでいる(連鎖、linkage)。

体節に固有の構造を支配するので、この遺伝子の突然変異によって体の構造は大きく狂ってしまう。

  • アンテナペディア遺伝子の突然変異によって触角の位置に肢が生えてくる。双胸遺伝子の突然変異によっては、胸部が二つできる。(ショウジョウバエは双翅類というように普通は胸部第2節に1対の翅が生え、第3節には翅が変化した平均棍が生える。それがこの突然変異によって平均棍ではなく、ちゃんとした翅が生えた胸が二つになる.)

ホメオティック選択遺伝子が解析され、その塩基配列が分ってくると,いずれの遺伝子にも180塩基の非常に相同性の高い部分が含まれていた.この部分が180塩基長で60個のアミノ酸をコードするホメオボックス(homeobox)である。

  • タンパク質のこの部分をホメオドメイン(homeodomain)と呼びDNAにはたらいて転写を調節するためのDNA結合部位(helix-turn-helix)である
  • ホメオドメインを含むこれらのタンパク質は、DNAに結合して転写を調節する重要な分子であることが分った。現在では、ホメオティック遺伝子(あるいはホメオタンパク質)という言葉には、最初の相同異質形成(ホメオーシス)という意味は薄れ、ホメオボックスを含む遺伝子(あるいはホメオドメインを含むタンパク質)という意味合いが強くなっている。

ショウジョウバエで見つかったこの配列は、生物に共通した配列である。ホメオティック遺伝子は、進化の歴史で保存されてきたDNA領域であり、重要な働きを持った部分であることが推測された。ショウジョウバエでも哺乳類でも、この遺伝子は発生の過程で身体の構成を順序立てる重要な働きをしていることが分かっている。

ヒトのホメオティック選択遺伝子

HOX遺伝子はホメオボックス遺伝子の代表である。ホメオボックス遺伝子の働きを一言で述べると(各体節の)
細胞がそれぞれ何になるか(細胞分化)を決定する遺伝子となり細胞の運命を決めるように胚の段階で発現する.
HOX遺伝子以外にも多くの遺伝子が染色体上のいろいろな位置に存在する.

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ヒトで保存されているショウジョウバエANT-C, BX-Cクラスホメオボックス遺伝子のホモログ遺伝子を示しています。
進化過程でこれらの遺伝子は重複し,ヒトでは4コピーが4つの異なる染色体に配列する。
同じ番号であるが異なる染色体上にある複数遺伝子が1つのパラログ群をつくる

遺伝子は頭尾方向に3'側(早く発現)から5'側(遅く発現)へと発現する.

レチノイン酸はこれらの遺伝子発現を修飾するが3'側の遺伝子がより強く反応する

レチノイン酸

  • ビタミンAであるレチナールのアルコール基が体内で酸化されカルボン酸になったもの
  • ビタミンA摂取の量的異常が発生異常をきたすことは以前から知られていた
  • レチノイン酸は脂溶性ビタミンのため容易に細胞膜を通過し核内受容体に結合する
  • 核レチノイン酸受容体は転写因子で種々の遺伝子発現を変化させ分化をすすめる方向に働く
  • 発生過程でもレチノイン酸が作られ情報伝達分子としてHOX遺伝子などに作用し細胞分化に大きな役割をはたす

添付ファイル: fileHOXall.png 2416件 [詳細]

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Last-modified: 2020-05-28 (木) 19:06:03 (72d)