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Pneumocystis Jirovecii

Pneumocystis carinii ニューモシスチス・カリニと呼ばれていた単細胞真核生物でヒトに肺炎を起こす病原体は現在Pneumocystis Jirovecii ニューモシスチス・イロベチイと呼ぶ(チェコの寄生虫学者Otto Jirovecを顕彰して命名された)

  • 以前は原虫と考えられていたが, タンパク質と核酸の分子生物学的相同性から近年P. Jiroveciは子嚢菌性酵母-->[fileAscomycota.txt]に属する真菌であることが強く示唆されている.
  • ほとんどの真菌細胞膜必須構成成分であるエルゴステロールP. Jiroveciiには存在しない.
  • アムホテリシンBなど, 殆どの抗真菌薬はエルゴステロールの合成阻害や機能阻害が作用機序のためにエルゴステロールのないP. Jiroveciiなどの真菌には無効である.
  • 最も有効な治療はST合剤(sulfamethoxazole/trimethoprim)でAIDS患者の感染予防にも用いられる.
  • P. Jiroveciiは自然界に広く分布している. 培地上に, はえず, 培養ができない.
  • 世界的にほぼ100%の小児が3歳までに抗ニューモシスチス抗体を有するが乳幼児には抗体をみいだせない*1
  • ヒト-ヒトへの感染は認められない--成人のpneumocystis肺炎発症は, ずっと以前に感染したが, 生体の正常な感染防御機構で監視されていた病原体が免疫反応の監視から逃れるために起こるとする内因性再燃説が以前は主流であったが…
  • 2歳児の大部分に抗体が確認され, 小児や慢性呼吸器疾患を合併する高齢者の呼吸器での定着が確認されるようになり, ヒトからヒトへの感染が広まっていることが確認され発病は, 現在, 外来感染説が有力となっている*2
  • pneumocystis感染の防御にはTリンパ球が重要な役割をはたすことが確認されており、Tリンパ球の機能障害や機能低下状態である先天性異常, 栄養障害, 抗癌剤や副腎皮質ステロイド免疫抑制剤の使用により発症する。
  • AIDSなど免疫不全患者では肺に存在する休眠細胞の再活性化により炎症を来たしガス交換をブロックする滲出液が産生される
  • 未治療の場合の致死率はほぼ100%

AIDS患者のCD4が200/μl以上ならばpneumocystis肺炎のリスクは減り、抗菌薬の予防投与は基本的に必要ない。

CD4が200/μl以上であっても口腔カンジダ症の既往, AIDS指標疾患の既往, CD4%が14%未満の場合はpneumocystis肺炎になる危険がある。

non-HIV患者ではpneumocystis肺炎とCD4の数との関係はHIV患者ほど明確ではない。 Mansharamani*3らのnon-HIV患者171pneumocystis感染症例では全員が化学療法かステロイドの投与を受けていた。

診断は肺組織や肺胞洗浄液のP. Jirovecii感染の証明による. 培養が不可能のため, 診断にはPCRをおこなうか病理組織所見による菌体の確認が必要となる。

組織細胞所見

jiroveciXP01.jpg
  • P.Jiroveci肺炎のX-p像は典型的には肺門周囲から始まりすぐに全肺野に広がる
  • 急速に進行する斑状の気腔性陰影を示す。
  • 片側性, 大葉性の分布はまれ
  • 胸水は非常にまれであり有意な胸水の存在はJiroveci肺炎否定の材料となる*4
  • 肺門, 縦隔リンパ節腫大も通常は認められない。
 
Jiroveci.jpg

肺胞洗浄液のグロコット染色
マクロファージに貪食されたP. Jirovecii(=P. carinii)
Grocott染色で黒く染まる円形, カップ状cup-shaped, あるいは三日月型の菌体を認める。

AIDSほか免疫不全患者におけるP.Jiroveci肺炎の病理像

  • hyalin membraneの出現する非特異的DAD(Diffuse alveolar damage)
    • 特徴的な泡沫状ピンクの肺胞内滲出物は伴わない
    • 慢性化するとfibrinに富む滲出物に器質化をきたす。
  • 非特異的間質性肺炎のパターン
    • hyaline membraneや蛋白に富む浮腫は伴わない
  • 肉芽腫様病変, 嚢胞病変の形成もある
  • 肺以外の臓器への播種もある

pneumocystis pneumonia --cases

Case01 70歳男性, 慢性関節リウマチでステロイド投与をうけていた。

PCPLpf01.jpg
PCPmpf01.jpg
PCPhpf01.jpg
PCPhpf02.jpg
Fig.01Fig.02Fig.03Fig.04
jirovecii01.jpg
jirovecii02.jpg
Grocott染色 x40Grocott染色

リンクページ

Pneumocystis pneumonia (PCP)は, 著明なリンパ形質細胞浸潤を呈することがあり, 鑑別診断を考慮しなかったり, pneumocystis jiroveciiが認められない場合, lymphocytic interstitial pneumonia(LIP)と誤診されることがある。*5
■ LIPのWeb症例ページ-->Pittsuburgh Uni. Pathology Case studies page #176


*1 Walzer p., New Engl J Med 324:263-265, 1991
*2 日本医事新報 No448; 47-51, 2010
*3
*4 Forrest JV.,Radiology 103:539-544,1972
*5 Colby TV, Koss MN, Travis WD. Atlas of Tumor Pathology. Tumors of the Lower Respiratory Tract, third series, fascicle # 13, 1994, Washington, DC, Armed Forces Institute of Pathology, pp 422-427.

添付ファイル: fileAscomycota.txt 1076件 [詳細] filePCPmpf01.jpg 1401件 [詳細] filePCPhpf02.jpg 1442件 [詳細] filejirovecii02.jpg 2258件 [詳細] fileJiroveci.jpg 2200件 [詳細] filejirovecii01.jpg 1799件 [詳細] filePCPLpf01.jpg 1496件 [詳細] filejiroveciXP01.jpg 1603件 [詳細] filePCPhpf01.jpg 1409件 [詳細]

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Last-modified: 2014-08-29 (金) 12:41:20 (1786d)