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胸腺 Thymus

胸腺は発生学的に上皮性器官で上皮細胞間に骨髄由来のリンパ球が侵入, 増殖してリンパ上皮性器官を形成する。この他, 数は少ないがマクロファージ, 樹状細胞が存在する。間質には血管結合織が認められる。

胸腺はT細胞成熟--(T細胞レセプター遺伝子の体細胞遺伝子組み換えと発現, 細胞増殖, 抗原刺激による選択, 成熟表現型と機能性の獲得)--の主要部位である

T細胞は個々に, ただ一つの特異性しか持っていないが, それぞれの特異性は異なっているために全T細胞をみると体内には何百万という抗原に対する特異的TCR(T細胞レセプター)が存在することになり,
このT細胞の多様性をT細胞レパートリーという.

この膨大なレパートリーはゲノム上にコードされている多数の部品(遺伝子)をランダムに組み合わせて遺伝子再構成を行うことで得られている. ランダムに構成されたTCRは, すべてが有用というわけではなく, なかには有害な自己反応性のTCRも多数混在している.
多数のT細胞から, 有用なT細胞を選別し, 有害なT細胞を排除するのが胸腺の役割である.

T細胞の分化については--->T細胞の分化のページも見て下さい。

胸腺の退縮した成人でもある程度のT細胞成熟が持続していることが, 成人骨髄移植患者で免疫系が再構築されることから想像できる。退縮した遺残胸腺で十分かもしれないし, 胸腺以外のT細胞成熟の場所があるのかもしれないが不明である。

Memory T細胞は20年以上の長期にわたり生存し, 蓄積していくために加齢にともなってT細胞生成の必要性は低下する。

 

★ thymus 「さいむ(/ま)す-と発音」--の語源は, 仔牛胸腺のソテーの香りがハーブのタイムの香りに似ているからという話がありますが、ほんとうでしょうか。胸腺の割面がタイムの花芽に似た構造をしているからという説もありどちらが本当かわかりません。-->語源についてのブログ1 and 2がありました.

仔牛の胸腺料理「フランス料理, リー・ド・ボー(ris de veau)」なんて食ったことないのでハーブのタイムに香りが似ているかどうかなんてわからないもんねえ。誰か食べました?

 

胸腺の発生

第三咽頭嚢の末端に腹側翼, 背側翼があり, 腹側翼の上皮が分化して胸腺を形成する。背側翼は下上皮小体(副甲状腺)になる。両者の腺は咽頭壁と連絡を失い, 胸腺は下副甲状腺を引き連れて尾内方へ移動し最終的に胸郭内へ移動して反体側の胸腺と癒合する.
ときに尾部が残存し甲状腺内に埋没するか, 独立した頸部胸腺巣となる.*1*2

胸腺は発生学的に上皮性器官である. 肝や骨髄より遊走してきて上皮細胞間に進入, 増殖するTリンパ球前駆細胞と混合してリンパ上皮性器官を形成する.

  • 胎生8週ころ, 第薫頭嚢内胚葉性上皮に由来する胸腺上皮細胞が索状に間葉内へ進入, 分散して上皮細胞網を形成する。
     
  • 胎生9週には, 血管をともなう結合組織が入り込み, 小葉構造が形成される。胎生9週までは胸腺は完全な上皮性器官である.
     
  • 胎生10週にはTリンパ球前駆細胞が肝や骨髄より遊走して来て, 次第に, CD2+, CD7+胸腺細胞が増加, 上皮細胞間の間質を満たすようになる。皮質髄質の分化が始まり皮質上皮は丸く, 髄質上皮はより紡錘形となる。
     
  • 上皮細胞索の一部は同心円状に集塊を形成, 15週ころから髄質でHassal小体が出現する.
     
  • 胎生14〜16週ころ(4ヶ月) に胸腺基本構造が完成するといわれる。

転写因子forkhead box N1(Foxn1)は胸腺上皮細胞発生のmaster regulatorであり, Foxn1の持続発現が成人における胸腺上皮細胞形質維持に必要である. *3

pharysac01.jpg pharyngeal_pouch.jpg(115.2KB) <--クリック拡大

甲状腺内埋没胸腺から腫瘍-胸腺癌が発症することがある。-->城南病理・SPS合同集談会2009年9月−Case08; Carcinoma showing thymus-like differentiation(CASTLE)

 

胸腺

thymuscut.jpg
Thymusmacro.jpg

胸腺は胸骨の後で心臓の前上方にある白色調の臓器。中央で癒合した左右両葉のある組織です。胎生期に急激に成長し出生時は12-15g, 思春期には最大30-40gとなり, 成人では退縮して脂肪組織に埋没し肉眼的には不明瞭となってしまう。60歳では10gほどに萎縮する。(肉眼的には脂肪組織と区別がつかない)

Virtual Slide---> 乳児胸腺(1歳男児) 右クリックで新しいウィンドウで開くと便利です。(sorry. You need ID and psswrd to see Virtual Slide)

右図は乳児胸腺肉眼像および割面像。この胸腺標本には中央で割が入っています。

thymus-HE-loupe.jpg(778.8KB) thymus-cortex-hpf.jpg(400.1KB) thymus-medulla-hpf.jpg(433.8KB) 左から, loupe像, 皮質, 髄質拡大像(クリックで拡大できます)

 

左右二葉の胸腺は, 小葉構造をとり各小葉は分化途上のT細胞に相当する小リンパ球(胸腺細胞; thymocyte)が密に存在する皮質(cortex)と小葉中央部に存在する, 皮質と比較してリンパ球密度の低い髄質(medulla)から構成される。
髄質のリンパ球は大リンパ球が多く, 皮質リンパ球より細胞質に富む.髄質はHEで明るく見える. 髄質にはHassal小体(上図,右下)が散在している.

 

Tリンパ球前駆細胞の胸腺移入と胸腺内Tリンパ球の増殖分化

胸腺皮質および髄質という機能の異なる領域でのT細胞分化, 選択の分子メカニズムについてはこれまで膨大な研究がおこなわれ詳細な解析がなされている。*4

胸腺へのTリンパ球前駆細胞の移入

thymocyteDev02.jpg
  • 胎生期には肝において造血幹細胞より胸腺前Tリンパ球前駆細胞が形成されており, 特異的分化マーカとしてPIR (paired immunoglobulin-like receptors)が発現されている.*5血液を経て, 胸腺に移入する.
     
  • 胸腺原基はE12.0までに形成され(マウス), 副甲状腺原基, 咽頭壁に近接している。この時期には血管は形成されておらず, Tリンパ球前駆細胞は間葉組織を通って胸腺原基に移入する。生後にはT前駆細胞が皮質髄質境界部血管より胸腺に進入する。
     
  • 副甲状腺原基上皮細胞はケモカインCCL21を発現し, Tリンパ球前駆細胞のGタンパク質共役レセプターCCR7を介して, 胸腺近傍に誘引する.
    胸腺原基上皮細胞はケモカインCCL25, CXCL12を発現することによりTリンパ球前駆細胞を誘引する。*6*7
     
  • 胸腺移住後, Tリンパ球前駆細胞のPIR発現がDN1段階のうちに1日で低下する。T系列への最初の特異的分化マーカはDN2におけるCD25であったが, PIRは, それ以前のT細胞分化マーカであり胸腺前T細胞分化が固有の分化経路として実体化された*8

胸腺移入後皮質でのthymocyte増殖と分化

  • 胸腺に移入したTリンパ球前駆細胞は, 胸腺皮質上皮細胞(thymic cortical epithelial cell; cTEC)に高発現するIL-7とNotchリガンドDLL4による分化誘導シグナルを受け, 盛んに増殖する. またRAG1/2複合体を発現することでT細胞抗原受容体(TCR)β遺伝子座の再構成を開始する。
     
  • TCRβ遺伝子座で, 最初にD-J再構成がおこる. ついで V-DJ再構成がおこる. (DN2, DN3のthymocyteでおこる)
     
  • いずれか一方の対立遺伝子で完了した再構成V(D)Jがコドンフレームの適合した全長TCRβ鎖を産生するようになると, TCRβ鎖とpTα鎖が会合したプレTCR複合体が細胞膜表面に発現される。(DN3-DN4のthymocyteでおこる)
     
  • プレTCR複合体はリガンド非依存下でシグナルを惹起し, もう一方の対立遺伝子上のTCRβV(D)J再構成を抑制して, ひとつのTリンパ球に発現されるTCRβ鎖を1つに限定させる*9
     
  • また, プレTCR複合体シグナルは, TCRα遺伝子座V-J領域の遺伝子を誘導するとともに, CD4やCD8の転写を誘導することで胸腺皮質で, TCRα鎖を発現するCD4+CD8+期(Double positive; DP)のTリンパ球分化を促進する。

胸腺皮質でのTリンパ球選択

胸腺皮質で産生される新生Tリンパ球の抗原認識特異性はTCRαβ鎖をコードする核内ゲノム構造の不可逆的変化により決定され,自己成分に対する反応性とはまったく関係ない。そのため新生TCRαβ+CD4+CD8+胸腺細胞はひとつひとつ自己分子との反応性により選択される。
胸腺細胞の実に95%が自己にとって不利なものであり選択により除去される*10

新生Tリンパ球は胸腺皮質で産生され, まずcTECに発現される自己ペプチド断片とMHCの複合体(peptide major histochompatibility complex; pMHC)とTCRの相互作用により選択される。

胸腺は新生Tリンパ球のうち, 自己に対して有害な認識特異性の細胞や無用な認識特異性の細胞を排除し, 自己に有用な細胞のみを成熟させる機能をもつ。

  • pMHCとTCRの親和性において, 低親和性の相互作用がある場合にT細胞の生存と分化が誘導される。この過程を「正の選択」と呼ぶ.
    一方で相互作用がない(自己との反応性が弱い)場合や, 高親和性のときは, 細胞死が誘導され胸腺皮質で新生リンパ球が排除される.

マウスでは正の選択により生存と分化が誘導される細胞は新生TCRαβ+,CD4+,CD8+胸腺細胞の1-5%といわれる.

cTECに提示され正の選択を誘導するpMHCの自己ペプチドはcTECに固有であり, その他の体細胞に提示されるpMHCのペプチドとは異なる。

cTECには特異的に発現される構成鎖 β5tを含むcTEC特異的プロテアソーム(胸腺プロテアソーム)が発現される.-->胸腺プロテアソーム

プロテアソームはユビキチン化された細胞質たんぱく質を分解するプロテアーゼ複合体でありMHC classIにより提示されるペプチドは主にプロテアソームにより産生される*11

β5t欠損マウスの解析からβ5tを含むcTEC特異的胸腺プロテアソームは生体にとって有用な抗原特異性を持つMHC classI拘束性のCD8陽性Tリンパ球の正の選択に必要であることが明らかになっている。*12*13

cTECには cathepsin L*14*15やthymus-specific serine protease(Tssp)*16*17 などのプロテアーゼが高発現しており他の体細胞とは異なったMHC classII会合ペプチドを提示することでMHC classII拘束性CD4陽性Tリンパ球の正の選択を誘導する.

cTECには固有のたんぱく質分解機構が存在し, cTEC固有の自己抗原ペプチド産生提示機構により自己の生体防御に有用なTリンパ球を産生する。しかしcTECにより産生されるpMHC分子本体は未解明である。

胸腺ナース細胞 thymic nurse cells

近年胸腺皮質細胞の約10%は, 多数の幼若DP胸腺細胞を細胞質内に取り込む, 古典的に胸腺ナース細胞(thymic nurse cell; TNC)と呼ばれていた細胞であることが明らかになった.

TNCに内包されるDP胸腺細胞は, TCRα遺伝子座の遺伝子再構成に一度失敗した細胞が濃縮されていることがわかった。TNCは効率よく正の選択をされなかったDP胸腺細胞がもう一度遺伝子再構成することで再挑戦をおこなう場であることが示唆された。*18

胸腺T細胞の皮質から髄質への移動と髄質形成

皮質での正の選択は新生リンパ球のケモカイン受容体とTNFスーパーファミリーサイトカインを介してmTECと相互作用しTリンパ球の髄質への移動と髄質形成を制御している

  • 胸腺皮質の新生Tリンパ球においてTCRシグナルはTリンパ球の正, 負の選択決定において必要であることに加えて, 細胞表面にケモカイン受容体CCR7の発現を誘導する.
     
  • CCR7のリガンドであるCCL19, CCL21は主に胸腺中のmTECに発現するため正の選択をうけ生存が保証されたTリンパ球はmTECに誘導されて皮質から髄質に移動する。
     
  • 新生リンパ球のTCRシグナルは, この他にRANKLをはじめとするTNFスーパーファミリーサイトカインの産生を促進する。RANKL受容体のRANKはmTECに高発現しておりRANKL刺激はmTECの増殖を促す。このように皮質において正の選択をうけたTリンパ球のTCRシグナルは髄質形成に大きく貢献している。
     
  • TCRシグナルを受けた皮質DP胸腺細胞はRANKL以外にCD40LやLymphotoxinなどのTNFスーパーファミリーサイトカインを産生し, 受容体のCD40やLTβR受容体を介してmTECのさらなる増殖や機能成熟を制御している。
 

髄質における自己寛容の確立

AIRE-protein-gene.jpg

mTECは特定臓器でしか発現しない遺伝子(組織特異抗原)を異所的に発現する「無差別遺伝子発現; promiscuous gene expression」とよばれる性質をもち, 全身臓器に発現される自己抗原のペプチド断片をMHC複合体としてTリンパ球に提示する。インスリンなど本来胸腺内で出会うことのない様々な末梢組織自己抗原を発現させることで免疫寛容の誘導に寄与していると考えられている。*19*20

胸腺髄質領域の希少な上皮に発現する核内因子Aire(autoimmune regulator; エア)

Aireは遺伝性自己免疫疾患の「自己免疫性内分泌症・カンジダ症・外胚葉ジストロフィー」(autoimmunepolyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystorophy; APECED)の原因遺伝子として同定された。*21

Aireは無差別遺伝子発現を含むmTECの機能を制御する。Aireなどを介したmTECにおける組織特異抗原の発現はTリンパ球の自己生体成分に対する免疫寛容の確立に必須である.

髄質に移入したTリンパ球はmTECに発現される全身の自己分子群に会うことで二度目の選択をうけ, 自己分子に強く反応するTリンパ球は排除される(負の選択)

髄質にはmTECと共に樹状細胞(Dendritic cells)が集積している。mTECはAire依存性にサイトカインXCL1を産生しDCを胸腺髄質に局在させる。Aire欠損マウスではmTECによるXCL1 mRNA発現低下とDCの髄質局在不全が観察されている。*22

AIRE遺伝子は, 胸腺における一部の髄質上皮細胞で最も強く発現し, ついでリンパ節での発現が強い. さらに高感度検出法で肝臓, 脾臓, 末梢血中単球や樹状細胞でもAIRE遺伝子発現が確認されている。*10

AIREは転写因子としてT細胞が攻撃してはいけない臓器特異的なタンパク質(自己抗原)にかんする遺伝子群の発現を調節している*10

胸腺髄質の制御性T細胞生成

胸腺髄質の制御性T細胞生成にはmTECとDCが関与しており, Tリンパ球の自己寛容確立に必須である. 制御性T細胞の生成は, Aire欠損マウス, XCL1欠損マウスにおいても障害される。

成熟Tリンパ球の胸腺からの移出

髄質で負の選択をまぬがれた成熟Tリンパ球は, 転写因子KLF2(Kruppel-like factor 2)を発現し, その結果スフィンゴシン1リン酸受容体(Sphingosine-1-phosphate-receptor 1; S1P1)が発現される*23

スフィンゴシン1リン酸(S1P)は胸腺を含む実質臓器に比べて血流中に豊富に存在するためS1P1を発現する成熟Tリンパ球はS1Pに誘引されて血流へ放出される。

胸腺皮質髄質の上皮細胞

胸腺上皮細胞;細胞数は少ないが胸腺皮質(正の選択の場), 胸腺髄質(負の選択の場)において免疫システム形成の根幹を支える細胞集団である。T細胞の分化, 選択と機能獲得の研究に比較して上皮細胞の分化や組織形成自体に関するメカニズムについては不明な点が多く残されている

胸腺上皮細胞の組織学, thymocyte(T-cell)以外の胸腺構成細胞の組織学

胸腺上皮細胞は細長い細胞質突起をもち相互に連絡し網状構造を形成している。末梢リンパ組織の間葉系細網細胞とは超微小形態において以下の点で異なる。*24

  • 血管周囲, 被膜下など間葉成分と接する面には必ず基底膜形成が認められる。間葉系細網細胞は細胞質が細網線維を取りかこんでいるが基底膜は形成しない。
     
  • 上皮細胞は相互に典型的な接着斑(デスモゾーム)によって接合し, ここに多数のtonofilamentが付着している
     
  • 間葉系細網細胞接合部には緻密斑(tight junction; TJ)の形成はみられるが, 典型的な接着斑は認められない。
     
  • 胸腺上皮細胞は多分化能をもち, 主に扁平上皮に分化を示すが, 腺上皮への分化能ももっており, 部位により異なる形態を示している。
     
  • 皮質の上皮細胞
  • type I
    結合組織性の被膜と胸腺の境界に存在し, 成長途上のT細胞を胸腺被膜の他, trabecular,血管周囲の結合組織から隔離する.
  • type II
    皮質内に存在する.大型の明るい核,長い細胞突起を隣接する細胞に伸ばす星型の細胞.I型細胞同じく隔離機能を示すがI型と異なりMHC気鉢曲子出現している.
  • type
    皮質と髄質の境界に存在する.機能的バリアの役割.MHC気鉢曲子出現

type兇type珪緘蕕琉貮瑤, 細胞質内に複数のTリンパ球を含む特殊な上皮リンパ球関連パターンをとり, 皮質最外層の被膜下に存在して, 胸腺ナース細胞 (ナーシング胸腺上皮細胞 Nursing thymic epithelial cell, NTEC)と呼ばれる.

NTECは未熟な胸腺T細胞に対して,分化・増殖・成熟という従来のナーシング機能のほかにアポトーシス生成の場を提供し,さらにアポトーシス誘導能とアポトーシス細胞の貪食・消化能を有する.

胸腺ナース細胞によるアポトーシス細胞の認識には HDL 受容体 CLA-1 が関与しており,CLA-1 はアポトーシス細胞表面のホスファチジルセリンを認識している可能性が示唆されている.

 
  • マクロファージ
    T細胞の98%はアポトーシスをおこしmacrophageに貪食される.lysosomeがPAS陽性に染まる
  • 髄質の上皮細胞

髄質のリンパ球密度は皮質より低くリンパ球はほとんどが大リンパ球で皮質リンパ球より細胞質に富む.髄質はHEで明るく見える.

  • type
    type刑挧Δ棒椶靴涜減澆垢.一緒に皮髄の境界を形成している.
     
  • type
    髄質全体に存在し細胞突起のデスモゾームで互いに結合し髄質の骨格をつくりリンパ球を区分けする.
     
  • type
    髄質の特徴的な所見である胸腺小体(Hassal小体)をつくる.緻密な上皮塊で扁平な核をもつ.ケラトヒアリン顆粒,脂肪滴,中間系フィラメント束が細胞質に認められる.中心は角化している.機能はよくわかってないがIL-4とIL-7を産生する.胸腺の発達とT細胞の教育にかかわっているようである.
     
  • trabecule 血管が中を通り実質に分布する.深いところで結合組織の鞘を伴い髄質に分布する
  • 髄質分泌型上皮

髄質分泌型上皮はHassall小体周辺部にあり角化傾向を欠いて外分泌活動に関連する小器官を含んだ大型細胞で皮質型上皮細胞,角化細胞とは接着班で連なっており髄質にあって腺上皮への分化傾向を示す

小器官は神経内分泌細胞のcored vesicleに類似した小顆粒と集簇性空胞の2種類である.空胞が融合して形成された微小粘液嚢胞はPAS陽性.嚢胞壁の分泌型上皮細胞細胞質にはIgA陽性secretory componetがある.またCEA陽性となる.小嚢胞が発達して髄質の腺毛上皮嚢胞が形成されることがある.

  • 遺残腺管構造
    ヒト胎児の副甲状腺原基と胸腺原基をつなぐ上皮索が未分化な腺管構造をとりキュルシュタイナ管canal of Kuersteinerと呼ばれる.成熟とともに断裂消失する

2. 神経内分泌細胞

Hassal小体周辺の胸腺髄質に神経内分泌顆粒を有する細胞が少数散在する.これらは気道・消化管の内胚葉性上皮組織の神経内分泌細胞と同様で腫瘍化するとカルチノイドとなる

3. 副甲状腺細胞
ヒト胸腺皮膜内にしばしば副甲状腺上皮細胞集団が存在する.胸腺上皮と連続していることもある.

4. 筋様細胞
胎齢24週の胎児胸腺には免疫組織学的に確認できる筋様細胞が出現する.keratin,S-100は陰性.胎児胸腺培養や胸腺腫細胞の短期培養により筋様細胞が出現することから上皮細胞は筋様細胞に分化する能力をそなえていると推定される.

 

Claudin, AIRE発現と胸腺上皮細胞の分化

Hamazaki Y et al.*25

  • 上皮細胞細胞シートを形成するタイトジャンクション(TJ)の構造, 機能に中心的役割をはたすクローディン(Claudin; Cld)について調べると, 24のCld familyのうち,Cld3およびCld4が成熟胸腺の一部の髄質上皮細胞に特異的な発現をしめした。
     
  • Cld3,4発現細胞は, 胸腺細胞の選択過程に重要なMHC classII, CD80/86刺激分子と共にAutoimmune Regulator(Aire)を発現する特殊に機能分化した髄質上皮細胞であることが明らかになった。
     
  • AIREを発現する髄質細胞は本来胸腺内で出会うことのない様々な末梢自己抗原を胸腺内に発現させることが可能である。
     
  • 胸腺髄質上皮細胞にAIREが特異的に発現することは, 末梢自己抗原に対してどのように寛容が誘導されるのかという疑問に答えるほか, ながらく不明であった髄質上皮の重要な機能解明へのブレイクスルーとなった。
     
  • Claudin3,4は最も初期の胸腺原基である第薫頭嚢壁重層上皮層の最頂層に特異的に発現, 発生が進むにつれて, この細胞を中心に髄質領域が形成される。
     
  • 最終的にはAireを主に発現する一部の髄質上皮細胞にのみClaudin3,4の発現が維持されることがわかった。
 

胸腺髄質の発生起源が明らかになり, 胸腺髄質・皮質への最初期のdiversificationと領域形成が重層上皮の形態をとる胸腺原基の頂側にあるか, 基底部側にあるかという位置情報をもって開始される可能性を示している。

 
 

胸腺上皮細胞分化における皮質上皮(cTEC)と髄質上皮(mTEC)の分化

胸腺皮質, cTECとmTECの系譜分岐は非対称性におこり, 互いに異なる分化経路をたどると考えられる.

  • これまでの胸腺上皮前駆細胞(pTEC; progenitor ETC)からcTEC, mTECへ同時に対称的な分化がおこる(図1)*26という概念ではないことがわかってきた.
     
  • mTECは胸腺プロテオソームβ5tやcTECで高発現するCD205やIL-7などのcTEC関連分子を一過性に発現するpTECの段階を経て生成されることが明らかにされた.*27 *28
     
  • mTECを特異的に生成し自己複製能をもつmTEC幹細胞が同定された. 胸腺髄質機能不全により自己免疫疾患を発症するマウスに, この幹細胞を移植すると胸腺髄質機能が回復し, 自己免疫疾患発症を抑制することが示された.*29

pTECから分化したmTECはCD80とMHCIIの発現により高発現細胞(mTEChigh)と低発現細胞(mTEClow)の2種類の細胞群に分けられる.

  • mTEClowは未熟mTECを含む. (この細胞がclaudin4+ か)
     
  • mTEChighは無差別遺伝子発現をおこしている機能的に成熟した細胞を含み, その多くは無差別遺伝子発現を制御する核内転写制御因子のAireを発現している。
     
  • mTEChigh細胞はさらに, Aire, CD80, MHCIIなど成熟マーカ発現が低いterminal mTECへ最終分化する. この細胞集団は未熟なmTECと異なり無差別遺伝子発現を保っており, T細胞自己寛容成立になんらかの働きをしていると考えられる.*30
     
  • mTEChigh細胞に由来するmTEClow細胞への最終分化はAireに依存している.*31
     

文献*32より胸腺上皮分化の図を作成--左が非対称分化の図

 

TEC-differentiation.jpg TEC-markersNeu.jpg

 
 
 

mTECによる, 無差別遺伝子発現(promiscous gene expression)は, mTEC集団全体ではほとんどの組織特異的抗原の発現が検出される. 一つひとつの自己抗原は1〜3%程度のmTECで発現され, mTECは遺伝子発現プロフィールとしてモザイクを形成している.*33

mTECでの無差別遺伝子発現は, 少なくとも部分的に核内因子Aireにより制御されている. Aireの機能不全はヒトで遺伝性自己免疫疾患の自己免疫性多腺性内分泌不全症I型(autoimmune polyendocrine syndrome typeI; APS-1, 別名; autoimmune polyendocrinopathy-candidiasis-ectodermal dystrophy: APECED)の原因となる.

Aire非依存的な組織特異的抗原の遺伝子座ではヒストン修飾やCpGのメチル化が転写許容状態であるのに対して, Aire依存的な組織特異的抗原の遺伝子座は転写抑制状態にあり, Aireが非メチル化ヒストンH3リジン残基4(H3K4)と会合して転写を抑制状態から許容状態に変換するepigeneticな機構が組織特異的抗原発現を制御するという報告がある.*34


*1  ラングマン人体発生学 第11版 MEDISI Tokyo 2016
*2  浅野茂隆ほか監修 三輪血液病学第3版 pp35-38 2006年 文光堂 東京
*3  Alves NL. et al.,Thymic epithelial cells: the multi-tasking framework of the T cell "cradle". Trends Immunol. 2009 Oct;30(10):468-74.
*4  香西美奈, 高濱洋介 T細胞分化を司る胸腺の器官形成と機能 生体の科学 2014; 65(3): 226-232
*5  Masuda K, et al., Prethymic T-cell development defined by the expression of paired immunoglobulin-like receptors.EMBO J. 2005 Dec 7;24(23):4052-60. PMID:16292344
*6  Liu C, et al., Coordination between CCR7- and CCR9-mediated chemokine signals in prevascular fetal thymus colonization. Blood. 2006 Oct 15;108(8):2531-9.
*7  Calderon L, et al., Three chemokine receptors cooperatively regulate homing of hematopoietic progenitors to the embryonic mouse thymus. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 May 3;108(18):7517-22.
*8  http://kawamoto.frontier.kyoto-u.ac.jp/research/research_02.html
*9  Yamasaki S, et al., Mechanistic basis of pre-T cell receptor-mediated autonomous signaling critical for thymocyte development. Nat Immunol. 2006 Jan;7(1):67-75.
*10  山口良孝, 清水信義 自己免疫疾患解明への新しい突破口:AIREを中心として 生化学 87(3); 362-372: 2015
*11  Rock KL, et al., Degradation of cell proteins and the generation of MHC class I-presented peptides. Annu Rev Immunol. 1999;17:739-79.
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*13  Nitta T et al.,Thymoproteasome shapes immunocompetent repertoire of CD8+ T cells. Immunity. 2010 Jan 29;32(1):29-40.
*14  Nakagawa T, et al., Cathepsin L: critical role in Ii degradation and CD4 T cell selection in the thymus. Science. 1998 Apr 17;280(5362):450-3.
*15  Honey K, et al., Cathepsin L regulates CD4+ T cell selection independently of its effect on invariant chain: a role in the generation of positively selecting peptide ligands. J Exp Med. 2002 May 20;195(10):1349-58.
*16  Gommeaux J, et al., Thymus-specific serine protease regulates positive selection of a subset of CD4+ thymocytes. Eur J Immunol. 2009 Apr;39(4):956-64. Comment in The adaptive phenotype of cortical thymic epithelial cells. [Eur J Immunol. 2009]
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Last-modified: 2019-01-08 (火) 19:57:35 (221d)